金融コラム どうなる英総選挙「メーンシナリオは保守党優位」みずほ総研 吉田氏 (2017/06/02)

英総選挙が8日と間近に迫るなか、一部調査によるとメイ首相率いる与党・保守党の獲得議席数が過半数を割り込むとの結果が出ました。みずほ総合研究所・欧米調査部の吉田健一郎上席主任エコノミストに総選挙の見通しやブレグジット(離脱)の行方などについて聞きました。

 

――5月31日に公表された英調査会社YouGovの調査によると、保守党の獲得議席数が過半数を割り込む結果になりました
 「この結果は英国内でも衝撃だったようでメディアがこぞって報じている。確かに足元では保守党と、最大野党労働党の支持率の差が縮小している。その理由は、保守党の政権公約(マニフェスト)に盛り込まれた社会保障改革の内容だ。10万ポンド以上の資産を保有する場合、認知症などで在宅介護に必要な費用は自己負担とされた。
 この案自体は以前からあったが、10万ポンドの内訳に住宅資産が含まれることが明らかとなり、予想外の内容に保守党支持者の一部が離れた格好だ。全英の平均的な住宅価格は23万ポンド程度とされている。そこで急きょ内容を一部修正して対応している。5月下旬の複数の世論調査によると保守党の支持率は40%を上回っており、大勝利の可能性こそ低くなったものの、保守党優位のメーンシナリオは変わらないとみている」

――両党の「ブレグジット」に対する考え方は
 「保守党は欧州連合(EU)単一市場からの離脱(加えて関税同盟からの離脱)、移民抑制を掲げる「ハードブレグジット」(強硬離脱)を表明している。一方、労働党は単一市場との関係維持に含みを残す「ソフトブレグジット」(穏健な離脱)を示している。
 ソフトブレグジットの場合、非EU加盟国のノルウェーのように欧州経済領域(EEA)に加盟して農業と漁業以外は単一市場にアクセスするという選択肢もある。ただ、この場合はEUに関する法令などの意思決定がないほか、人の自由移動が規制される、EUに予算の貢献を求められる、といったデメリットもある。
 ちなみに、国民投票でEU離脱が決定した背景には、ボリス・ジョンソン英外相がEUに支払っていた週3.5億ポンドの拠出金で病院が一棟建つと発言していた影響もあった。しかし、EUからのリベート(払い戻し)もあり、差し引きすると実際の支払金はこれほど多くないことが明らかにされた」

――ブレグジットで英国とEUが交渉に入った場合の争点は
 「英国がEUに支払う「離脱請求書(Brexit Bill)」とも呼ばれる離脱清算金になるだろう。具体的な金額は決定していないが、600~1000億ユーロとの報道もある。仮に上限の1000億ユーロになった場合、英国の2016年度歳出の約11%に相当するため巨額だ。ただ、EUから800億ユーロ程度の返済金があるとの試算もあり、実額は抑えられるだろう。
 この離脱清算金問題にメドが立たない限り、欧州委員会は英国が望む自由貿易協定(FTA)交渉を開始しない構えだ。離脱清算金を巡る交渉が難航すればEUと英国の間で通商協定がない「空白期間」が発生し、この時期が長引くとポンドや株式相場の重石になる可能性がある」

 

■英調査会社YouGovの調査結果(5月31日)

5万人超を対象に実施した5月31日の調査結果によると、メイ首相率いる与党・保守党の獲得議席数は311議席と現議席数(330)を下回り、過半数(326議席)を割り込むとの結果になった。一方、野党・労働党は255議席と現議席(229)から増える見込み。

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