金融コラム ビッグデータと資産運用、ゴールドマンAM諏訪部氏に聞く (2016/11/16)

米ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの諏訪部貴嗣氏が来日した機会に、ビッグデータ革命と資産運用業界への影響について聞いた。諏訪部氏は、ニューヨーク本社で計量投資戦略グループのリード・ポートフォリオ・マネージャーとアクティブ・エクイティ・リサーチの共同責任者を務めている。

 

資産運用でビッグデータの活用が本格化している。米ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの計量投資戦略グループの諏訪部貴嗣マネージング・ディレクターは「ビッグデータによる資産運用は実用化されており、すでに競争が始まっている」と話す。分析の対象は企業の決算情報やアナリストの業績予想など数値データだけでなく、文章や経営者の声色、交流サイト(SNS)などに広がっている。

データを分析して資産運用に活かす手法は株式市場ではクオンツ分析として古くから知られている。足元でインターネットの普及によるデータの爆発的増加、人工知能(AI)など技術革新、データ処理能力の飛躍的向上により「ビックデータを駆使して高い運用能力を発揮できるようになった」(諏訪部氏)という。

ビックデータの活用による資産運用は未来の話ではなく、すでに現実のものだ。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントがビックデータを活用して投資するファンドは過去7年間との比較でMSCIなどインデックス(指数)を上回る成果を出しているという。

ビックデータを活用する資産運用の世界では財務数値以外の情報の利用が始まっている。決算会見では記者からの質問に答える経営者の声のトーンを解析して神経質になっているかどうかを調べる。アナリストのリポートからは文章が強気になっているか弱気になっているかを分析して、投資判断が変化する兆候を嗅ぎ取る。衛星写真からは小売店の駐車場の混雑具合を調べて売上高の推測に使う。

ビックデータの資産運用は従来のモデルを改良、蓄積していくため「先行者利益が大きい」(諏訪部氏)。機械対人間の論争においては、機械は長期の未来予測が難しいと指摘されることが多い。諏訪部氏は機械が10年先の未来を想定するのは困難と認めながらも資産運用については「近未来について5分5分よりはマシな程度の予測で十分に実用化する意味がある」と指摘する。

11月9日に行われた米大統領選では共和党候補のトランプ氏が勝利した。諏訪部氏は機械が予想しにくい結果だったと話す一方、「確率が低い事態が起きた時に何が起きるかを機械で分析した結果を人が利用することでリスクをコントロールできる」と話した。

 

諏訪部貴嗣氏の略歴

計量投資戦略グループのリード・ポートフォリオ・マネージャー及びアクティブ・エクイティ・リサーチの共同責任者を務める。2004年にゴールドマン・サックス証券グローバル投資調査部のジャパン・ポートフォリオ・ストラテジー・グループのメンバーとして入社。2009年7月にゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントにシニア・エクイティ・リサーチャーとして異動。 2012年にマネージング・ディレクターに就任。ゴールドマン・サックス証券に入社する以前は、野村総合研究所および野村證券金融経済研究所に勤務。日本ファイナンス学会とMPTフォーラムが共同発行する「現代ファイナンス」誌の編集者であり、かつては日本証券アナリスト協会試験委員を務めた。1995年に東京工業大学理学部を卒業、2011年に総合研究大学院大学博士課程を修了。

 

(取材:QUICKコンテンツ編集グループ・片野哲也)

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