金融コラム ファッション市場を揺るがすキーワード「プチプラ」…デフレとは言い切れない流行の秘密とは? (2016/08/29)

現在のファッション市場では、「プチプラ」というキーワードが市場を揺るがしています。世の女性たちが安価な商品を買い求めていること、これまでの「デフレ」とは異なる、新しい消費者マインドが理由となっているのです。

そもそも、「プチプラ」とは?

プチプラとは「プチプライス」の略で、簡単に言えば、値段が安い、手軽に購入できる商品を意味します。ファッション業界では女性向けの衣類、雑貨、化粧品が対象となっており、例えば「ユニクロ」や、その低価格版ブランドである「GU」、または「しまむら」や「無印良品」などがプチプラブランドの代表格と言えます。特に、値段が安くてかつ「かわいい、おしゃれ」である商品を指します。

プチプラ自体は2010年頃から主に女子高生や20代前半の女性の間で話題に挙がっており、取り立てて新しい用語ではありません。ところが、ここ数年、より年代が上の「大人」の女性も含めて、広く用いられるようになりました。例えば、Googleのキーワード検索の人気度をグラフ化した「Googleトレンド」サービスを利用して、「プチプラ」の人気度のグラフを見てみます。

上記のグラフを見れば、2014年頃から急速に人気度が上昇していることが分かるかと思います。2016年3月に一旦のピークを迎えていますが、現在も高い人気を維持しています。

プチプラ流行は「SNS」が一役買っている

「安価な商品が人気」となると「デフレが進行している」と考えたくなりますが、そうとは言い切れない面もありそうです。

まずそもそも、国内でデフレが進行しているとは言えない状況です。デフレが進行していないことの根拠としては、総務省統計局が発表している消費者物価指数が挙げられます。2014年の消費税引き上げによる物価上昇を除けば、2010年以降、全体の物価あるいは衣服の物価はほぼ横ばいの傾向が続いています。

また、過去には「牛丼戦争」「ハンバーガーの価格破壊」など、デフレ時代を象徴する価格戦争が起こりましたが、プチプラ流行はそれらとは一線を画しています。過去の流行に共通するのは、商品同士の価格競争の結果として安いモノが流行したこと。プチプラ流行は、そのような競争によって生み出された訳ではありません。

実は、プチプラの流行に重要な役目を担っているのが「SNS」(ソーシャルネットワークサービス)であり、とりわけ写真共有サービスである「インスタグラム」が大きく影響しています。インスタグラムは2010年頃から米国を中心に広まっているサービスで、日本では2014年頃から急速に流行が広がっているサービスです。これは、プチプラの流行が始まった時期と一致しています。

インスタグラムでは、利用者(個人)のファッションコーディネートや購入品などさまざまな画像がアップロードされています。そのなかでも、「#プチプラ」「#プチプラコーデ」などのハッシュタグをつけてプチプラ商品を紹介している利用者が多く見られます。例えば、下記の投稿では、ユニクロで購入したボトムスを着こなすコーディネートが紹介されています。

Hanaさん(@hana.7jo)が投稿した写真

インスタグラムなどSNSで良く見かけるワードとして、「パトロール」が挙げられます。これは、「ユニクロ」に代表されるプチプラブランドの店舗に訪れて、掘り出しモノが無いかチェックすることを指します。とくに「しまむら」を対象にした「しまむらパトロール」「しまパト」が有名です。しまむらの品ぞろえの特徴は「安い」もさることながら品数が多く、中には「おしゃれ」「かわいい」商品が見つかることから、パトロール先の典型的な店舗として人気となっています。例えば下記は、しまむらパトロールで発掘したシャツを着こなしている投稿です。

インスタグラムのハッシュタグで良く見かける上場銘柄のブランドとしては、例えば下記が挙げられます。いずれも、ここ数年で売上を伸ばしている企業です。

銘柄 ブランド ハッシュタグ
ファーストリテイリング(9983) アパレル「ユニクロ」「GU」 #ユニクロ #上下ユニクロ部 #GU
しまむら(8227) アパレル「しまむら」 #しまむら #しまむらパトロール
良品計画(7453) アパレル、雑貨、化粧品「無印良品」 #無印良品 #MUJI
セリア(2782) 100円均一「セリア」 #セリア
キャンドゥ(2698) 100円均一「キャンドゥ」 #キャンドゥ
パル(2726) 300円均一「3coins」 #3coins

SNSが変えるのは、ファッションの「ブランド力」か

SNSがファッション市場にもたらしていることは、「プチプラ」という単語が流行している事実のみではありません。そもそも、ファッションブランドにおける「ブランド力」が大きく変わろうとしています。

SNS普及前は、「TV」や「雑誌」などのメディアが情報発信源となり、ファッション流行の舵を取っていました。そこで大きく取り上げられるのは、広告費を大きく掛けられる「高級ブランド」「大手ブランド」です。消費者がブランドを選ぶに当たり重要だったのは「作り手が発信するイメージ」であり、そのイメージを生み出すコストが価格に乗っていたと言えます。

しかし、SNSの普及により、良いモノは瞬時に拡散される現代においては、「作り手のイメージ」よりも「モノ自体の良し悪し」が重要視されつつあります。特にインスタグラムなど写真共有サービスでは、いかに写真映えするかが鍵となっています。

この時代においての「ブランド力」とは、「消費者同士で共有したくなるような商品を産み出せる力」といえるでしょう。これまでのファッションビジネスでは「広告費を掛けて情報を発信する」ことでブランド力を維持するのが一般的でしたが、そのビジネスが根本から見直される時代に差し掛かったともいえそうです。

(編集:QUICK Money World)

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