金融コラム ラーメン業界をいろんな「メン」から分析! (2016/07/11)

カレーと並んで日本の国民食と称される「ラーメン」。おいしい、すぐできる、値段が手ごろと三拍子そろった、日本のファストフードの代表格といえるでしょう。日本全国にあるラーメン店の数は、「タウンページ」に登録されている店だけでも3万軒以上あります。また、政府統計によると「ラーメン店」の売上高は5000億円を超えます(2012年調査)。これは、「そば・うどん」店の市場規模とほぼ同等です。これだけ大きな市場であるラーメン市場ですが、その中身を見てみると色々と興味深いことがわかります。

ラーメン店は実に多種多様

ラーメン業界の大きな特徴のひとつに、「寡占化が進まない」ことがあげられます。ラーメンは味のベースだけでも、しょうゆ、塩、みそ、とんこつ・・・と多岐にわたり、さらに麺やトッピングなど、その味は非常にバラエティに富んでいます。そのため店ごとの特色が出しやすく、また客の味の好みも分かれるため、大手チェーンの寡占化がなかなか進まない市場なのです。下の図は「簡単業種分析」を使ってラーメンの関連銘柄の売上高を表したものです。この中で1位の王将フードサービス、2位のリンガーハットがそれぞれ、中華料理チェーン、ちゃんぽんチェーンであることを考慮すると、ラーメンチェーントップといえる3位の幸楽苑HDの売上高が382億円と、それでも数パーセントのシェアにとどまることがわかります。同じく外食業界のハンバーガーや牛丼では、上位の大手チェーンによる寡占が進んでいます。個人経営の店がまだまだ頑張っているのがラーメン業界であり、その分競争も激しいものになっています。

大手ラーメンチェーンの店舗数、海外を牽引する意外な企業

では、大手チェーン間での競争はどのようになっているのでしょうか。ラーメン関連銘柄と、主なラーメンチェーンの店舗数をまとめてみました。

大手ラーメンチェーンの店舗数を見てみると、いくつか興味深いことが読み取れます。まず、大手ラーメンチェーンには未上場の企業が多いということです。上の図において水色で塗ってある企業は未上場企業です。独自のラーメンフォークが特徴的であり、東海地方で圧倒的な人気を誇る「スガキヤ」、こってりとしたラーメンで西日本を中心に人気の「天下一品」など、いずれも株式は未公開となっています。企業が非上場を選ぶ理由は、「財務状況を公開する義務がない」「買収されない」ことなどが挙げられますが、ラーメンチェーンの場合、創業者が経営者である場合が多く「株主の意見に左右されず、経営陣の迅速な意思決定ができる」ということが大きな理由ではないかと推測されます。

また、海外の店舗数に目を向けると、「味千ラーメン」を展開する重松産業が他の大手チェーンを差し置いて圧倒的です。熊本県地盤の「味千ラーメン」は、日本ではあまりなじみの無い方も多いかもしれませんが、中国で成功し、同国で最も有名な日本の外食チェーンのひとつとなっています。

幸楽苑vs日高屋という構図は正しいのか?

さて、よく言われるラーメンチェーン同士の競合に「幸楽苑」vs「日高屋」という構図があります。どちらも低価格のラーメンを主力としています。「幸楽苑」の「あっさり中華そば」は税込421円、「日高屋」の「中華そば」は税込390円となっています。また、サイドメニューのギョーザは「幸楽苑」が税込216円、「日高屋」が税込210円とどちらもお手頃価格です。店舗数では「幸楽苑」の方が100店舗ほど多いものの、売上高(2016年)は「幸楽苑」382億円、「日高屋」367億円とほとんど差は見られません。しかしここで、「幸楽苑と日高屋はお互いを意識したライバル関係だ」と言うのは少し早計です。両社の出店戦略に大きな違いがあるからです。

「幸楽苑」は福島県発祥の企業ですが、九州・四国地方を除く全国へ展開しています。その店舗は主にロードサイド型で、広い駐車場を確保してあることが特徴として挙げられます。主なターゲットはファミリー層で、テーブル席を設け、お子様メニューとしてガチャガチャ付きのセットも販売しています。狭いカウンター席で肩を並べて食べる、というよりも、ゆったりとしたテーブル席で、ファミレスのような感覚です。

一方の「日高屋」は首都圏への集中的に出店する「ドミナント戦略」、駅前のビルイン型店舗が特徴です。また、同社のHPでも「ちょいのみ日高」とアピールされているように、ターゲットは主にサラリーマンで、会社帰りに一杯、の需要を狙っています。アルコール類やおつまみ類は幸楽苑よりも充実し、ラーメン+餃子+ビールでも千円でお釣りがくるのは、大変うれしい値段設定です。駐車場を設けない分、アルコール類の販売を積極的に行えることが強みです。

 以上のように、両社の出店戦略には明確な違いが読み取れます。また、両社のライバルとしては、「幸楽苑」の場合、同じく全国的に展開し、主な店舗形態がロードサイド型である「リンガーハット」が挙げられます。

「日高屋」の場合もまた、ライバルが必ずしも幸楽苑というわけではありません。「日高屋」はその出店戦略として、ハンバーガーのマクドナルド、牛丼の吉野家と、競合する他の外食産業の店舗の近くに出店しています。あえて外食産業のトップと肩を並べて出店することで、出店調査の費用を抑え、相乗的な集客効果を狙った戦略なのです。ですので、ライバルとしては必然的にマクドナルドと吉野家が挙げられます。

とはいえ、両社ともやはり「低価格帯ラーメン」という分野において競合する関係です。少し別の角度からも分析してみます。

営業利益に大きな差

グラフは過去5年間の売上高と営業利益の推移を表したものです。両社とも売上高は順調に伸びていますが、大きな違いは営業利益です。

日高屋は売上高・営業利益ともに高い伸び率を保っている一方、幸楽苑の営業利益は2012年から2013年にかけて大幅に落ち込んでいます。先ほど日高屋はその出店戦略で、アルコール類の販売を得意としていると述べました。アルコールは利益率が高い(=原価率が低い)ので、そこに差が表れているのではないか、と思うかもしれません。つまり原価率の差が営業利益の差につながっているのではないかという推測です。しかしデータを見てみると、必ずしもその説明では、説明しきれないことがわかります。

では幸楽苑の営業利益が2013年にかけて大幅に落ち込んだ理由は何でしょう。その理由は、①出店拡大による費用増加、と②人件費の増加、にあると考えられます。

まず①の出店拡大による費用の増加ですが、会社HPによると、幸楽苑の店舗数は、2012年3月末の465店舗から、2013年3月末の511店舗へ1年間で46店舗増となっています。これは、1年間で、既存店舗数の10%近くを増やした計算になります。幸楽苑は1,000店舗体制実現に向けた出店戦略で、業界シェアの拡大を図っています。

②の人件費の増加ですが、有価証券報告書によると、2012年3月末現在の平均年間給与は3,278(千円)、2013年3月末現在の平均年間給与は3,724(千円)と、13.6%の増額になっています。また、従業員数も4%ほど増加しています。以上の2点が、営業利益を押し下げた要因ではないかと分析できます。

ラーメンは伸びる?

さて、今回はラーメン業界について分析してきました。日本食のブームに乗り、海外への進出を積極的に進める企業もあります。海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)は2012年12月、「博多一風堂」を展開する「力の源ホールディングス」に対し、約7億円の出資と最大13億円の融資枠を設定し、支援を決定しました。また、トリップアドバイザーが発表した「外国人に人気の日本のレストランランキング2015」において、「一蘭」渋谷店がTOP10にランクイン。吉野家ホールディングスは2016年6月、都内を中心にラーメン店を展開する「せたが屋」(世田谷区)を傘下に収めると発表しました。少子高齢化等の影響により、将来に厳しい見方もある外食産業ですが、ラーメン業界はまだまだ話題が豊富です。ラーメン業界の未来に思いをはせながら、今日は行きつけのラーメン屋で一杯すすりませんか?

 

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