金融コラム ソニーのセグメント変遷の歴史を徹底分析、受け継がれる「遺伝子」とは? (2016/06/14)

ソニー(6758)といえば、世界で通じる高いブランド力を保持する企業。一方で投資家にとっては「セグメントを頻繁に変更する」「事業が多岐に渡る」企業として、特にファンダメンタルを重視する投資家を悩ませています。そもそも、ソニーとは「何屋」なのでしょうか?

そこで、QUICKの業績データベースを使い、ソニーの20年分以上の決算資料を分析。セグメントの変遷を紐解き、1つの絵に纏めました。変わりゆく事業、その中でも変わらない「ソニーの遺伝子」とは?ソニーが歩んできた過去、現在、そして未来について解説します。

1993年まで・・・ソニーといえば「オーディオ・ビジュアル」

1993年頃までは、ソニーの主力商品はビデオや音響の分野から誕生してきました。ウォークマン(1979、以下カッコ内の西暦は発売年)やCDプレーヤー(1982)は発売するや一躍ヒット商品に、8ミリビデオ(1985)とベータマックス(1975)はそれぞれVHSに後塵を拝する結果となりましたが、放送用ビデオ機器の販売は好調そのもの。80年代から90年代にかけては、まさに日本の「オーディオ・ビジュアル」を牽引する存在でした。

これらの事業と「テレビ」を合算した「エレクトロニクス」(電機機器)セグメントは近年までのソニーの主力でした。ソニーと言えば「エレクトロニクス」と答える人も多いのでは。そんなソニーの転機となるのが1994年。ビジネスを一遍させる、ある商品が発売されることに・・・

1994年から2002年まで・・・ソニーと言えば「ゲーム・PC」

1994年12月3日、ソニーにとって歴史的な日を迎えます。家庭用ゲーム機PlayStation(プレイステーション)(1994)の発売です。家庭用ゲーム機における任天堂の一強時代に待ったをかけるべく投入されたこの商品、大容量を格納できる光ディスクと3Dグラフィックス描画により、旧来のゲーム機と比べて表現能力が大幅に進化しました。多くのゲームメーカーが挙って対応ゲームを発売したこともあり市場で大きなシェアを獲得。以降のソニーは任天堂と肩を並べるゲーム業界の巨頭に君臨しています。好調な売り上げに伴い、1997年度からは「ゲーム」セグメントをエレクトロニクスから分離し、1つの事業として歩むことになります。

この年代にはもう一つ、PlayStationと肩を並べるほどの主力商品があります。それが個人用PC(パソコン)のVAIO(1997)です。個人にPCが普及するきっかけとなった大ヒットOS(基本ソフト)、Windows95/98が登場した90年代後半は「PCブーム」真っ最中。1997年から発売したVAIOは高いオーディオ・ビジュアル能力と、他と一線を画すデザイン性により、個人用PCとして大きなシェアを得るようになります。

1996年度まで「エレクトロニクス」セグメントの「その他製品」に含まれていたPC事業は1997年度より「情報通信」部門と変更、「エレクトロニクス」の大きな割合を占めるようになります。

「ゲーム」と「PC」、2つの主力製品を抱えたことでソニーはハイテク企業の代表格として投資家の期待を一身に背負う立場となりました。このまま期待通りに成長すると思われたのですが・・・

2003年から2007年まで・・・ソニーと言えば「デジタル家電」

2003年になって、それまで好調だったPC事業の販売が伸び悩みソニー全体の売上にも陰りが見え始めるなか、4月の決算発表で「事件」が起こります。投資家の間で楽観視されていた決算でしたが、ふたを開ければ1~3月期に大幅赤字を計上、さらに2004年度の見通しが大幅減益であると判明しました。発表の翌日には困惑した投資家からの売り注文が殺到、更には他の電機企業にも売りが波及しました。いわゆる「ソニーショック」です。

一転して先行きが不透明となったソニー。この窮地を救ったのが、2000年代前半にかけての「デジタル家電」のブーム到来です。特に「デジタルカメラ」「DVDレコーダー」「薄型テレビ」は「新・三種の神器」とも言われ、これらに該当するCyber-shot(1996)、スゴ録(2003)、BRAVIA(2005)が市場で高いシェアを獲得、エレクトロニクス事業は急成長を遂げ、ソニーは2007年度に売上高の最高潮を迎えます。

2006年にはコニカミノルタから一眼レフ部門を買収するなどデジタル家電への攻勢を強めるソニー、今度こそ順調に成長すると思われたのですが・・・

2008年から2011年まで・・・ソニーと言えば「?」

2008年9月、「リーマン・ショック」が発生しました。金融業界の機能不全は実体経済にも影響を及ぼし、法人向けと個人向けの双方で大幅に需要が減少しました。さらに、業績をけん引してきた「デジタル家電」も需要が一巡したことで販売が伸び悩み、エレクトロニクス事業は大幅な落ち込みを見せます。悪いことは重なるもので、VAIOと新型ゲーム機のPlayStation3(2006)も販売が伸び悩み、ドル箱といえる事業が見つからないなか、業績が低迷します。

このころから、低迷するエレクトロニクス事業を立て直すべく頻繁にセグメントを変更します。「エレクトロニクス」→「コンスーマープロダクツ&デバイス」→「コンスーマー・プロフェッショナル&デバイス」→「CPS」→「ホームエンターテインメント&サウンド」と毎年のように構造改革を進めるのですが業績改善には至らず、市場関係者からすれば「かえって投資家を混乱させる結果になった」とされています。

リーマンショック後の景気悪化と円高が、輸出企業であるソニーの重荷になった面もあります。一方、ソニーの業績を押し上げるようなヒット商品が出てこなかったのも事実。ちなみに、この時期に重なる2009年4月から2012年4月までソニー社長を務めたハワード・ストリンガー氏ですが、赤字続きにも関わらず高額報酬を受け取っていたことで批判を浴びました。

なかなか主力商品が生み出せず、このまま衰退するかと思われていたのですが・・・

2012年から現在・・・ソニーと言えば「ゲーム・スマホ」

2010年頃になると世界的にスマートフォンのブームが到来、日本でも「一人に一台は当たり前」の時代が到来します。スマホブームの追い風を全面に受けた商品が、AndroidスマートフォンのXperia(2008)。デジカメ事業で培ったイメージセンサー技術により他社商品よりも優位に立ち、数年で主力商品の仲間入りを果たしました。売上増に伴い携帯事業は「モバイル・コミュニケーション」セグメントとして独立し、現在まで主力事業として扱われています。

さらに、これまで低迷していた「ゲーム」セグメントも急速に売り上げが回復しています。好調の原因はPlayStation4(2013)が欧米を中心にヒットしたためで、同世代のXboxOneやWii Uを引き離して高いシェアを獲得しています。2014年には「ゲーム&ネットワークサービス」にセグメントを変更、上記の「モバイル・コミュニケーション」の売上を合算すると、かつての主力「エレクトロニクス」の後継にあたる「ホームエンターテインメント&サウンド」を大きく上回ります。

「音楽」「映画」「金融」・・・陰で支える3事業

ソニーの事業の多くは相次ぐセグメント変更の波に飲まれ名称変更や編入、分離を繰り返していますが、全く影響を受けていないセグメントが3つあります。1つは「音楽」、2005年にBMG(ベルテルスマン・ミュージック・グループ)との合併で決算報告の対象外となったものの、2008年に完全子会社化してからは、再度「音楽」セグメントとして独立しています。また、「映画」「金融」についても一貫して1つのセグメントとして独立しています。

いずれの事業も毎年安定した売り上げと利益を保っていることが特徴的です。特に「金融」はソニーにとって多くの利益を生む「孝行息子」、エレクトロニクス不振で苦しむソニーを支えてきた影の立役者です。さしずめ、「ぬれせんべい」のヒットで存続危機を免れた銚子電鉄のようです。

「PlayStation VR」は次期主力となるか?

簡単にソニーの歴史を紐解いていきましたが、時代により主力商品が異なることが分かります。これら主力商品に一貫して受け継がれていること、それは「オーディオ・ビジュアル屋である」ことの誇りと技術が詰められてきたということです。「デジタル家電」は当然ながら「PlayStation」「VAIO」「Xperia」についても、オーディオ・ビジュアル性能で他社との優位性をアピールしてきました。

そのソニーが2016に満を持して投入するのがVRヘッドセット「PlayStation VR」です。VRとはコンピュータで生成した仮想現実を、あたかも現実であるかのごとく認知させる技術であり、この技術によって映像は「見る」ものから「入る」ものに、ライフスタイル自体も変えうる未来性のある商品として期待されています。PlayStation VRは新世代のオーディオ・ビジュアルとなるべく「ソニーの遺伝子」が詰め込まれた商品となるでしょう。

とはいえ、「PlayStation VR」が主力商品となるかという点には、少々疑問の余地が残されています。理由は2つ。1つは日本人にとっては費用がかさむことです。販売価格は4万4980円で、ライバルの「Oculus Rift(9万4600円)」と比較してかなり魅力的ですが、注意しなければならないのはヘッドセットの他に「PlayStation Camera(5980円)」と「PlayStation4(3万4980円)」が別途必要なこと。欧米ほどPlayStation4の普及が進んでいない日本においては初期費用が高くつくため、VRを体験するためのハードルは高いと言わざるを得ません。

もう一つ、「PlayStation VR」専用のコンテンツがどれほど提供できるかが不明なことです。同様に未来性を打ち出した映像機器に「3Dテレビ」がありますが、魅力を訴求するほどのコンテンツに恵まれず、期待されたほど売れていません。各社の3D放送も減少傾向にある今、下火となっていくのは避けられないでしょう。「PlayStation VR」には「グランツーリスモ Sport」などゲームが対応すると発表されていますが、通常のディスプレイでも遊べるタイトルが多く、VRヘッドセットを付けてまで体験したい「没入感」を提供できるかが勝負でしょう。

(編集:QUICK Money World)

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