金融コラム 海を渡る日本料理、外食産業は大航海時代に突入!? (2016/05/31)

クールジャパン、それは日本の文化やコンテンツが世界で評価される現象を指しますが、なかでも顕著な経済効果を誇るコンテンツが「日本料理」です。魅力的な海外市場を狙う日本の外食チェーン、その動向を徹底調査しました。

アジア外食市場が急成長!その規模は「越境EC」を超える

近年、アジア各国の外食市場が急成長を遂げています。経済産業省の資料によれば、中国の外食市場規模は36兆円だった2009年と比較して、2020年には約110兆円と3倍近い成長を遂げ、米国を抜いて世界第1位の市場となる見込みです。また、タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポール、インドなどのアジア各国も年10%を超える勢いで成長しています。投資家に人気のテーマ「越境EC」は2020年に数10兆円の市場規模なると言われていますが、アジア外食市場はこれを優に上回る規模になることが期待されます。

成長の原因、それは「中間層」の増加にあります。一昔前のアジア各国においてレストランを利用する人は「富裕層」が一般的、その市場のキャパシティには限界がありました。近年の経済成長により「中間層」の人口が急増した結果、手の届く価格帯になった外食が「ご馳走」として広く利用されるようになっています。

「日本料理ブーム」を追い風に海外進出する外食チェーン

成長するアジア外食産業において、特に選ばれている外国料理が「日本料理」です。日本貿易振興機構(ジェトロ)の資料によれば、中国や韓国、タイなど多くの国が「好きな外国料理」の1位に日本料理を選択しています。クールジャパン推進運動の効果もさることながら、近年の世界的なヘルシー志向も相まって、日本料理のブランド価値が向上しているためです。

アジア外食市場の成長と日本料理ブームを追い風として、海外ビジネスに挑戦する外食チェーンが増加しています。以下は、海外店舗を多数展開する上場企業の一覧です。

海外店舗を多数展開する外食チェーン企業一覧(上場企業のみ、増加数は出店と退転の差引、QUICK調査)
銘柄名 主なブランド 海外店舗数 2015年の増加数 2016年の予定増加数
吉野家HD 吉野家、はなまるうどん 675 68 105
モスフードサービス モスバーガー 326 1 (不明)
サイゼリヤ サイゼリヤ 290 60 85
トリドール 丸亀製麺 243 141 80
ペッパーフードサービス ペッパーランチ 231 41 45
プレナス やよい軒 155 21 40
元気寿司 元気寿司 147 13 (不明)
壱番屋 CoCo壱番屋 143 20 30
ゼンショーHD すき家 ※130 62 126
ハチバン 八番ラーメン 118 1 3
ワタミ 和民 97 (不明) (不明)
大戸屋HD 大戸屋 88 13 16
コロワイド かっぱ寿司 46 (不明) (不明)

ゼンショーHDの店舗数は中国店のみ

吉野家HDトリドールなど多くの企業が国内出店数を上回る急速なペースで海外店舗数を増加させています。料理ジャンルに注目すると「寿司」「ラーメン」はもちろん、「うどん」「カレー」「牛丼」「和定食」など日本人にとっての定番料理がこぞって海外に進出、日本の「国民食」は世界の「国民食」となりつつあります。また、サイゼリヤは「ファミレス文化」の輸出に成功しています。

各企業がどのような戦略で海外に挑戦しているのか、壱番屋の親会社であるハウス食品と、丸亀製麺でおなじみのトリドールを例に解説します。

ケース1 ハウス食品の「カレーなる」戦略

即席カレー大手のハウス食品は昨年、カレーチェーン「CoCo壱番屋」を運営する壱番屋をTOBで取得し子会社化しました。また今年5月にはスパイス大手のギャバンに対するTOBを発表、TOBは成立する見込みです。一見すると2つの独立したTOBに見えますが、ここにハウス食品の海外戦略がうかがえます。

まず、日本人がイメージする「カレーライス」は海外で「日本式カレー」と呼ばれており、近年まで諸外国での知名度がありませんでした。ところが最近は海外、特に中国で日本式カレーが徐々に浸透しつつあります。その立役者がハウス食品、2005年頃から中国で販売を開始した即席カレールウ(日本でのバーモントカレー)が好評で着実に売上を伸ばしています。中国のカレーブームに合わせる形で、壱番屋も中国に進出し店舗数を伸ばしてきました。その壱番屋を子会社化することで、カレー事業全体の生産能力の向上と壱番屋の海外事業を後押しして、中国人に「家でも外でもカレーを食べる習慣」=「日本式カレー文化」の輸出を目論んでいると捉えることもできそうです。

しかし、近年は主原料である香辛料の価格が向上しています。カレーの大量生産するには香辛料の安定調達が必要であり(このことがカレーチェーンが新規参入しずらい原因となっている)、ギャバン買収にはグループ全体の香辛料の調達能力を高める狙いがあります。

ところで、なぜ海外で日本式カレーが受け入れられるのでしょうか。答えは簡単、日本式カレーは美味しいからです。想像してみてください、ほかほかごはんにトロッとかかるルウ、食欲をそそる香辛料の香り、体が火照る辛さ。日本人が美味しいと思うものは大抵、外国人にも美味しいものです。

ケース2 トリドール(丸亀製麺)は「うどん」を「UDON」に変える?

「丸亀製麺」「はなまるうどん」の台頭により、日本人にとって讃岐うどんは身近なファーストフードの一つとなりました。実は海外でも「UDON」の知名度がここ数年で上昇しており、アメリカではRAMEN(ラーメン)に次いでUDONブームが来ると注目されています。きたるブームに恩恵を受けると言われているのがトリドールが運営する丸亀製麺で、実際ここ数年で急速に海外店舗数を伸ばしています。

その契機となったのが、2011年のハワイでの出店。日本と同じ讃岐うどんスタイルで出店したところ瞬く間に大流行し、超人気行列店になりました。ハワイでの成功体験を武器に、アメリカ、東南アジア、中国などに進出し売上を伸ばしています。

丸亀製麺の成功を皮切りに、海外チェーン「WOK TO WALK」を買収するなど海外事業を積極的に展開するトリドール、2025年までに海外店舗数をなんと4000店まで増やす計画です。日本屈指の外食チェーン会社であるゼンショーHDのグループ店舗数が約4700店、計画通りなら肩を並べる店舗数となり、世界有数の外食チェーンにすることを目論んでいます。

ところで、なぜ海外でうどんが受け入れられるのでしょうか。答えは簡単、うどんは美味しいからです。想像してみてください、ツルツルでモチモチの麺、食欲をそそる出汁の旨味、サクサク食感の天ぷら。日本人が美味しいと思うものは大抵、外国人にも美味しいものです。

外食産業は「大航海時代」に突入する!?

ハウス食品トリドール、その共通点は「日本の味とビジネスモデルそのままで海外に出店している」ことです。現地オリジナルメニューは存在するものの、味や調理法は日本の店舗と比べて遜色有りません。海外で日本レストランを開くには、その土地の味覚に合わせて味を変えるべきという常識を覆しています。

日本の味覚がそのまま通用する、この状況を後押しする要因の一つに近年のグローバル化が挙げられます。グローバル化とはすなわち「国境を超えた価値観の共有」であり、訪日外国人の増加やクールジャパン推進運動によって、「日本人の好む味」が海外でも理解されつつあります。日本の外食産業にとっては海外進出の障壁が低くなったとも言える絶好のチャンスです。今回取り上げた料理以外にも「お好み焼き」「とんかつ」「しゃぶしゃぶ」「うなぎ」「甘味」など、ポテンシャルのある日本料理が数多存在します。

一方、日本国内に目を向ければ「少子化」「人口減少」という厳しい現実に直面しています。外食チェーンの多くが国内で飽和状態となっている現状、日本の外食産業はアジアの胃袋という「宝の山」を目指して海を渡る「大航海時代」に突入したと言っても過言ではありません。

編集:QUICK Money World

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