アジア特Q便 インドネシア、課税逃れに恩赦検討加速 パナマ文書も影響 (2016/04/21)

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※この記事は4月15日にQUICK端末で配信された記事です。

脱税者へ恩赦…法案審議、パナマ文書が新たな原動力に

インドネシアの脱税者に恩赦を保証するタックス・アムネスティ法案が国民議会で支持を集めている。法案が成立すれば、一部の海外資産が国内に還流し、今年の歳入が拡大するだけでなく、国内の資産価格上昇にもつながる見込みだ。

タックス・アムネスティ法案の審議は2カ月以上遅れている。汚職撲滅委員会(KPK)を弱体化させる目的で国民議会が提出している別の法案を政府に認めさせるための取引材料として、一部議員らがタックス・アムネスティ法案を利用していたためだ。

しかし、パナマの法律事務所モサック・フォンテカから大量の資産情報(パナマ文書)が流出したことが、議員らにタックス・アムネスティ法案の審議を進めさせる新たな原動力となった。パナマ文書には、インドネシアの実業家、政治家、現役の官僚、議員らの名前が含まれていた。インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は先週、税務当局に対してパナマ文書に名前が載っているすべての企業と人物を洗い出し、納税状況を調査するよう指示した。

インドネシア人の隠し海外資産額、同国のGDP上回る規模か

国民議会のアデ・コマルディン国会議長は、すぐに議会と政府の対立解消に向けて動いた。同氏は「国民議会はいかなる誤解も避けるため大統領とタックス・アムネスティ法案に関して再度議論する」と発言。「われわれは、法案が今年の税収拡大に不可欠であるということに同意している。また、パナマ文書で明らかになったような脱税行為の再発を防ぐ必要がある」と述べた。

ゴルカル党や開発統一党(PPP)、闘争民主党(PDIP)、民主主義者党など主要政党が公式にタックス・アムネスティ法案の支持を表明。反対勢力であるグリンドラ党も対立姿勢をやわらげたもようで、大統領との協議に応じることで合意している。 アデ議長によると、同法案は4月29日までに議会で可決される見通しだ。

インドネシア財務省は、課税を免れているインドネシア人の隠し海外資産額を同国の国内総生産(GDP)を上回る8,770億米ドル超と見積もっている。こうした状況を踏まえ、インドネシア政府が資産の一部を国内に呼び戻そうと提出したのがタックス・アムネスティ法案だ。同法案には、納税者が海外に隠した資産に関して1~3%の最終課税額を支払えば、滞納税を免除することなどが盛り込まれている。財務省によると、この措置により政府収入は44億米ドル増加する見通しという。

脱税者の資金、条件付きで投資許可へ…不動産業界に流入見こむ

インドネシア税制分析センターのエグゼクティブ・ディレクターを務めるユスティヌス・プラストウォ氏は、「納税者にとっては、年内にタックス・アムネスティ制度の下で資産をインドネシアに戻すことが得策だろう。2018年に各国の税務当局とタックスヘイブンの間で自動情報交換制度が導入される予定で、海外口座の租税回避が困難になるためだ」と述べている。

ユスティヌス氏が言及しているのは、タックスヘイブンでの節税対策の金融資産情報を各国の税務当局に開示するという経済協力開発機構(OECD)の計画のことだ。対象となるタックスヘイブンには、インドネシアでも有名な英領ヴァージン諸島やケイマン諸島、シンガポールなどが含まれている。

タックス・アムネスティ法案では、脱税者はインドネシアに戻した資金を1年間、政府債に投資すれば、その資金をインフラ、小売り、不動産といった他の分野に投資することが可能になる。 インドネシア不動産協会(REI)のエディ・ハッシー会長は「インドネシアの不動産業界は2016年に前年比で10~12%の成長が見込める」と語る。昨年の成長率は7%だった。同氏は「タックス・アムネスティ制度が導入されれば、新たな資金がインドネシアの不動産業界に流入してくるのは時間の問題」との見方を示している。【翻訳・編集:NNA】

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