アジア特Q便 香港、浙商銀と天津銀が上場 中国の景気低迷で投資家に慎重ムードも (2016/04/04)

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏がレポートします。(※本記事は2016年3月25日にQUICK端末で配信された記事です)

浙商銀と天津銀が上場…合計200億香港ドル規模調達

中国の商業銀行である浙商銀行(コード@2016/HK)と天津銀行(コード@1578/HK)が、きょう30日に香港株式市場へ上場する予定だ。浙商銀行はH株(中国本土企業株)を33億株発行、公募価格のレンジを3.92~4.12香港ドルとし、約129億~136億香港ドルを調達する。現時点で今年初めて香港で調達規模が100億香港ドルを越える新規株式公開(IPO)となる。一方、天津銀行はH株9億9550万株を発行。公募価格のレンジを7.37~9.58香港ドルに設定した。レンジの中間の値で算出した場合、諸費用を除いた調達規模は約74億1500万香港ドルとなる。
 昨年下半期(7~12月期)に香港で株式上場した中国系の金融銘柄と同じく、浙商銀と天津銀も比較的多くの中核的投資家を引き入れた。浙商銀は、浙江省海港運営集団、エン煤国際、紹興領雁股権投資基金パートナーシップ企業、申万宏源集団、アリババ集団(コード@BABA/U)傘下のアリペイ(香港)インベストメントの5社を中核的投資家とする。これら5社の引受額は合計約76億香港ドルで、今回の株式上場に伴う調達額の55.8~58.9%を占める。他方、天津銀が引き入れた中核的投資家は、中国船舶(香港)航運租賃傘下のFortune Eris Holding、華達、天津物産集団傘下の天物投資、天津房地産集団傘下の天房津城、山東天業房地産開発集団傘下の瑞フ祥投資、天津泰達投資ホールディングス傘下の泰達香港、および匯鼎ホールディングスの7社。同7社が今回の調達額の45.58~59.23%に相当する合計43億4800万香港ドルを引き受ける。

両社ともに成長率・資金繰りは高水準

浙商銀は浙江省に本部を置く全国規模の株式制商業銀行だ。国内の全国規模の株式制商業銀行12行中、2014年12月末時で総資産ベースで11番目の規模。浙江省や江蘇省、上海市といった華東エリアで主に業務を展開している。昨年9月末時点で北京市や上海市、江蘇省など11省(直轄市を含む)と浙江省内のすべての大規模都市を合わせた計約130カ所に支店を設けており、長江デルタや環渤海エリア、珠江デルタ、一部の中西部地域をカバーしている。12~14年にかけて総資産と経常収益の年間平均成長率(CAGR)がそれぞれ30.4%、28.9%と、香港に上場する中国の都市商業銀行の同期間の平均成長率を上回った。昨年9月末までの9カ月間の純利益は前年同期比26.8%増の56億3700万人民元で、上場している全国規模の株式制商業銀行の同時期の伸び率を上回り、同期間の自己資本利益率(ROE)も18.66%と、上場している全国規模の株式制商業銀行の同時期の平均より約0.7%高かった。
 浙商銀は事業を急速に拡大させると同時に、リスク管理と内部統制に関する対策に慎重に取り組んでいる。昨年9月末時の同行の不良債権比率は1.22%と、他のすべての上場している全国規模の株式制商業銀行よりも低かった。また、同時期の不良債権引当カバー率が227.61%、貸倒引当金カバー率が2.78%で、大部分の上場している全国規模の株式制商業銀行よりも良好だった。浙商銀は調達資金を各業務の持続的な成長に備えるための資金に充当する。

一方、天津銀は天津市に本部を置く都市商業銀行だ。中国の都市商業銀行としては8番目の香港上場銀行となる。同行の営業網は天津市、北京市、上海市、河北省、山東省、四川省の6省・直轄市をカバーしている。総資産は14年末時点で4789億元。12~14年の期間では、総資産のCAGRが25.8%、純利益のCAGRが29.6%で、同期間の中国の都市商業銀行の平均CAGR(総資産が21%、純利益が16.6%)をそれぞれ上回った。資産の質については、昨年9月末時点の同行の不良債権比率が1.49%と、同時期における中国の商業銀行全体の不良債権比率(1.59%)より低かった。また、同行の不良債権引当カバー率は199.79%で、同時期の中国全体の商業銀行の不良債権引当カバー率(190.79%)を上回った。天津銀はIPOで調達する資金を業務の持続的な発展を支える資本基盤の強化に用いる。

市場参加者は懸念…中国景気の低迷で

もっとも、中国景気の低迷が続く中、融資需要の減退と不良債権の増加への懸念から、香港の投資家たちは中国本土の銀行への投資に対して慎重になっている。昨年に香港株式市場へ新規上場した商業銀行の例では、鄭州銀行(コード@6196/HK)のIPOへの反応が比較的良かったのを除き、錦州銀行(コード@416/HK)や青島銀行(コード@3866/HK)ではいずれも株式購入の申し込みが応募枠に達しない状況だった。

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