金融コラム 「個人投資家の6~7割は負けている」!?主体別動向で見る個人投資家のスタイル (2016/03/18)

個人投資家は6~7割が負けている

株取引について、「クリック一つで○万円」「1日30分でも大丈夫」…このように「楽して儲ける」という趣旨の広告は少なくありません。そのようなイメージで相場の世界に入った方も少なくないと思います。しかし現に取引をした方の多くは、それが決して楽ではないとどこかの段階で思い知ったのではないでしょうか。結局、先述のクリック一つで~という触れ込みは、プロ野球選手の仕事を「1日4回棒を振るだけで○億円」と言っているようなもので、言葉のマジックに過ぎないのです。

野村證券が昨年10月に発表した「ノムラ個人投資家サーベイ」では、2015年7月31日から同年10月2日の期間における個人投資家1000人の投資動向調査において、通算で利益もしくは含み益となっている個人投資家は全体の9.3%、イーブンである±0が29.1%、損失もしくは含み損をとなっている層が61.6%となっています。

また、アメリカにおいても、個人投資家向け資産運用アプリ「Openfolio」のユーザー約60000人のうち、70%近くが2015年通算で損失となっているとCNN Money が報じました。*¹(ちなみに2015年のS&P指数の始値と終値は殆ど変らず)

指標は個人VS外国人(プロ)の構図を示す

では個人投資家は全体としてどのような売買を行っているのでしょうか。ここで日本取引所グループが発表している「投資部門別売買状況」をみてみましょう。

点線は、日経平均株価の推移です。青い線が外国人、集計元の日本取引所の定義では外為法所定の市場参加者や、外国証券会社の在日支店を指します。すなわち、ほとんどが機関投資家やファンドなどのプロです。赤い線が個人です。
 この図を見ると個人投資家は日本株を売り続け、おおむね外国人と反対の投資行動を取っていると見ることができます。つまり下がるときに買い、上がるときに売るスタイルです。リーマンショックのあった2008年付近の買いと、アベノミクスで日本株が上昇基調に入った2013年付近の売りが顕著です。
 ではその時期の売買動向を拡大して見てみましょう。

個人VS外国人(プロ)…リーマンショック編

 上の表で青色が個人、赤色が外国人です。下側の表の「証券自己取引」とは先物と現物の裁定取引など、証券会社のディーラーによる売買等を指します。ここから、以下の傾向が顕著であることが分かります。
① 個人投資家と外国人投資家はほとんど逆の投資判断をしている
② 証券会社の自己取引も個人投資家と逆の投資判断をしている。
 では上昇局面ではどうでしょうか。

個人VS外国人(プロ)…アベノミクス相場編

ここでもまさに芸術的ともいえるほど、個人と外国人・証券自己取引の注文が逆になっています。さらに、上昇局面では個人投資家は1万円あたりからの上昇局面でほぼ一貫して売り越しを続け、2万円台から1万8000円台に下げる局面になってやっと買い越しに転じています。

つぎに、個人投資家の投資スタイルをより詳しく検討するためにも信用評価損益率を見てみましょう。信用評価損益率とは、信用取引を行っている投資家がどれくらい含み損益を抱えているかをパーセンテージで表した指標です。含み損は最大マイナス40%近くまで持ち続けるにもかかわらず、含み益はすぐに利確する傾向があるようです。

上記動向と調査を合わせて考えてみると、個人投資家は、全体としては以下の特徴があると考えられます。

逆張りと順張り

投資主体別動向の統計を分析しましたが、要は、上記のグラフからプロは順張り、個人は逆張りという傾向がうかがえるということです。では順張りと逆張りはどのような差があるのでしょうか。
 順張りとは相場が高くなると買う、あるいは、相場が安くなると売ることをいいます。メリットは、一方向に動く相場において利益を最大化させることができることです。トレンドは長く続けば、利殖の期間も長くなる点が特徴です。反面、トレンドの発生・転換を見極めなければ利益が絵に描いた餅になってしまいます。
 逆張りは、相場が悪い時に買う、あるいは、相場が良い時に売ることをいいます。メリットは短期間で利益を得ることができるという点です。トレンドが崩壊するまでの期間は、そのトレンド期間の半分から3分の1程度であるといわれています。これは、資金が集中するまでに時間がかかるかわりに、換金するのは同じタイミングであることからです。そのため、大きな値幅を短期間でとることができるという妙味があるのです。
 個人投資家で逆張りを好む傾向があるのは、「安く買って高く売る」という基礎を忠実に守ろうとしているからなのかもしれません。しかしながら、どこが転換点であるかをきちんと見分けなければ、トレンドが崩壊するまでに資金が尽きてしまいます。2016年の日経平均についてプロが出した予想が大発会で4割、1月半ばの時点で9割外れていた*²ことからも明らかなように、相場の天井と底を見極めることはできません。逆張りは安物買いの銭失いになる危険もあり、順張りよりも実は難易度が高いのです。

主体別動向を売買に応用?

では、個人投資家の逆張り好きな傾向をどのように応用できるでしょうか。ここで、「人の行く裏に道あり花の山」という相場格言を紹介します。これは金融市場において他人と逆の行動をとることによって大きな利益を得ることができるという趣旨の言葉です。
 しかし”裏の道”に行っていたつもりが、ふたを開けてみると表の道を歩んでいたのでは本末転倒です。
 例えば、日銀が追加緩和を発表し、日経平均株価が急騰した2014年10月31日付近の主体別動向を見てみると、個人は大幅に売り越しています。これは「普通に考えたら緩和で相場は上がるだろう。とはいえ、緩和発表後の短期間で大きく上昇したので素早く利益確定売りをしよう(ここから下げるだろう)」と考えた人が実は個人投資家の中では多数派だったのかもしれません。
 また、リーマンショック直後の投資主体別動向の統計を見ると、相場では底をあてるのにこだわりすぎたのか、「落ちるナイフ」をつかみ、結局2番底で損切りになったような痕跡が見えます。一方のアベノミクス上昇相場では、長期に保有せず、短期間での利益確定売りを繰り返してしまったような動きが見えます。そのため、「リスクを取るが、利益は最小限で確定」という逆張り手法を用いているがために、個人投資家は総合して損失を被りやすくなってしまう、と考えることもできそうです。
 そこで、これらの要素を逆手にとって、個人投資家がとりがちな行動の逆をすることが”裏の道”になるのかもしれません。具体的には以下の通りです。
① 上がりだすと買いを入れる。下がりだすと売りを入れる。
② 買値から少し下がったところで損切りするか、いったん下げてから買値まで戻したところで買う。
③ 下がり続けた場合は追加購入せずすぐ売る。上がり続けた場合は買い、満足のいく利益が乗ったら利確する。
 これが個人投資家にとっての”裏の道”です。上記の主体別動向をよく見てみると、奇しくもプロや海外投資家の順張り手法と似ています。
 為替についても、QUICKMoneyWorldのツールの一つ、「ドル円ポジション」からもわかるように、棒グラフのピンク部分である外国人はドル円の売り越しに転じ、個人は買い越しを続けています。このような相場の中で、私たち個人投資家はどのようにして利益を得るべきでしょうか。戦略を練ってみましょう。

参考文献

*¹ Heather,L 2015/12/31.Nearly 70% of investors lost money in 2015:CNN Money

*² Sarah McDonald,2016/1/21.猿も木から落ちる、年始急落読めずプロ9割外れ-日本株安値予想(邦題):Bloomberg

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