アジア特Q便 インドネシア、REIT市場活性化へ 減税策が追い風 (2016/03/01)

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※本記事は2016年1月29日にQUICK端末で配信した記事です。

規制緩和で資金調達容易に

インドネシア政府が景気刺激の一環として、不動産投資信託(REIT)に関連する税規制の緩和政策を打ち出したことにより、不動産各社は今年、REITを通じて数十億米ドルを調達する見通しだ。インドネシアは数年前にREITの枠組みを整備したが、課税問題が不動産各社に二の足を踏ませ、同国に上場するREITは1社にとどまる。 インドネシア政府は昨年11月、不動産企業がREITの原資産にする不動産の移転先として設立する特別目的事業体(SPV)とREITそのものを単一の企業体として承認することを決定した。それまでは、REITとSPVの配当それぞれが課税対象となっており、投資家や不動産企業の負担を重くする要因となっていた。

金融監督庁(OJK)と財務省は現在、REITへの課税をさらに軽減するため(新たな)規制の最終案をまとめている。財務省案では、不動産企業が資産をREITにした場合に得られるあらゆるキャピタルゲインについて、所得税を1%に引き下げる方針だ。現在の税率は5%に設定されている。 OJKのムリアマン・ハダッド長官は「OJKと財務省は2月までに新規制を発布することで合意している。多数の企業が規制緩和に関心を示していることから、規制導入により投資を呼び込めると期待している」と語る。

不動産企業のREIT上場意欲増加…海外企業の国外案件にも期待

インドネシアの不動産業界最大のロビー団体、インドネシア不動産協会(REI)のエディ・ハッシー会長は「不動産企業は二重課税の廃止や減税案を歓迎するだろう。これらの措置は、不動産業界の成長加速につながるはずだ。REITには、不動産開発業者の新たな資金調達方法として大きな可能性がある」と期待を込める。実際、年内にREITを発行する計画を(すでに)発表している企業も数社ある。チプトラ・デベロップメントのコーポレート・セクレタリーを務めるツルス・サントソ氏は、政府が資産移転にかかる税金の引き下げを承認するのを待ち、子会社チプトラ・プロパティーの保有する不動産で構成される5兆ルピー(3億6200万米ドル)規模のREITを発行する計画と明らかにした。

チプトラと競合するスマレコン・アグンのアドリアント・P・アドヒ(Adrianto P. Adhi)社長によると、スマレコンもまた、当初予定していた子会社スマレコン・インベストメント・プロパティー(Summarecon Investment Property、SIP)の新規株式公開(IPO)に代え、年内に2億米ドル規模のREITを上場することを検討しているという。
さまざまな減税措置は、不動産部門への海外投資家の誘致に関して、インドネシアの競争力強化につながるはずだ。 OJKで資本市場の主任監督者を務めるファフリ・ヒルミ(Fahri Hilmi)氏は、「(インドネシア)の税制を他国に比べて競争力がある内容にするため、見直しを進めている。そうすることで、海外企業がインドネシア以外で進める案件についても、インドネシアでREITを上場するようになる」と期待を示す。

リッポーG、REIT移転で価値向上を期待…PwCは供給過多懸念

インドネシアの不動産開発最大手リッポー・グループは今年、減税措置を活用するため、シンガポールで上場しているREITをインドネシアに移動する方針だ。同グループは現在、シンガポール取引所(SGX)に35兆ルピア相当のREITを上場している。リッポー・グループのジェームズ・リアディ最高経営責任者(CEO)によると、それらのREITをインドネシアに移転することで、同グループのREITの資産価値は向こう3~4年で100兆ルピア超に増加する見通しという。

ただ、国際コンサルタント企業プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が最近発表した報告書は、インドネシアの不動産市場では今年、オフィスと高級居住用物件が供給過多になる可能性があると指摘し、同部門の利回りが低下するとの見方を示している。PWCは、「包括的な成長見込みはこれまでと同水準のままだが、米国が(おそらく)金利引き上げの準備をしていることへの懸念に加え、世界各国の一次産品市場の全般的な下落(インドネシア経済はそれらの市場に多少なりとも依存している)、ジャカルタの商業用物件分野が供給過多になっていることへの懸念などから、今年は東南アジア地域全体で経済の不安定さが高まりつつある」と述べている。【翻訳・編集:NNA】

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