金融コラム 生保株の業績が期待ほど伸びなかった理由とは? (2016/02/24)

好決算で株価は上昇するも予想は据え置き

2016年2月12日に発表された、大手生命保険の一角である第一生命保険の2015年4~12月期(第3四半期)連結決算は、純利益が前年同期比32%増の1735億円でした。これは、4~12月期としては、相互会社から株式会社に移行して以降の最高益を更新しています。

第一生命単体で順ざやが拡大しただけでなく、2015年2月に買収した米プロテクティブ生命の収益が寄与したことなどから好決算となりましたが、16年3月期の連結業績見通しは純利益が1610億円、経常収益が7兆960億円と据え置きました。第3四半期時点で会社通期予想を上回るなど、進捗率から考えれば好調そのものであるにもかかわらず、なぜ、通期会社業績予想を据え置いたのでしょうか。

マイナス金利導入による影響

保険会社は、年金や保険金・給付金を支払うために、株式市場や債券市場において「機関投資家」として資金を運用しています。第一生命保険の2015年3月末の資産の状況は、為替ヘッジ付き外債などの比率を増加させてはいるものの、45.1%が公社債での運用となっており、未だ高い比率を占めている状況です。

2016年1月29日に日銀金融政策決定会合で発表された「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は、公社債での運用が中心となっている保険会社にも大きな影響を与えました。「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は、金融機関が保有する日本銀行当座預金に0.1%のマイナス金利が適用されるというもので、具体的には、日本銀行当座預金を3段階の階層構造に分割し、それぞれの段階に応じてプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利が適用されます。

マイナス金利の適用が伝わってから、市場ではまず、収益が圧迫される可能性があるのは銀行等ではないかと注目されました。金利低下による貸出業務の利ザヤが縮小すると懸念されるためです。

この理由だと一見、保険会社への影響は無いように思われますが、運用面を見ると問題が浮き彫りとなります。頼みの長期国債のリターンが大幅に低下することになるからです。

仕組みはこうです。銀行は、今まで日本銀行当座預金に預けているだけで0.1%の金利を受け取ることができていましたが、今回の政策によりゼロ金利もしくはマイナス金利となる部分が発生するため、その部分の資金を国債など少しでも利回りのある安全資産に振り向けます。その動きが顕著になった結果、日本10年物国債の利回りは急低下し、一時は利回りがマイナスとなりました。

これまで日本銀行が実施していた「量的・質的金融緩和」政策は、国債の買入れなどを通じて、起点(翌日返済など一番期間の短い金利)を維持しつつ、返済までの期間が中長期の国債の利回りを低下させるものでした。専門的に言えば、「起点を据え置いた状態で利回り曲線(イールドカーブ)を押しつぶす(フラット化)」を狙ったものであり、金利の低下はあったものの、国債を購入して運用する保険会社は、長期国債などでは一定の利回りを確保できていました。

しかしながら、今回の政策はイールドカーブの起点をマイナスに引き下げてしまうため、状況に応じて長期国債までもがマイナス金利になってしまいます。長期国債で巨額を運用する生命保険会社は、リターンが大幅に低下することになります。このような運用難の状況を考えれば、通期会社業績予想が据え置かれたのも理解できます。

決算内容の驚きを可視化

日本銀行によるマイナス金利採用の発表は市場関係者においても想定外だったため、発表以前に作成された証券アナリスト達の第一生命の業績予想は、非常に強気なものでした。実際、4~12月期の連結経常利益は、会社通期予想進捗率88%で達成が確実視され、純利益については、すでに会社見通しを超えていますので、業績予想据え置きは、サプライズだったといえるでしょう。

このような、業績予想におけるサプライズを可視化できるツールが「決算サプライズメーター」です。企業規模などを加味したうえで、決算等で会社が発表した最新の今期業績予想(純利益)と、証券アナリストの予想の平均値(純利益)を比較して算出される「サプライズレシオ」により、数値化して見ることが可能となります。

 今回の第一生命保険の例では、「サプライズレシオ」が-152.32となっており、期待と比して、業績予想が伸びていないことが一目でわかります。このように、「サプライズレシオ」のマイナスが大きいほどネガティブサプライズ、プラスが大きいほどポジティブサプライズとなるため、決算資料に目を通す時間がなかったとしても、「サプライズレシオ」と「決算サプライズメーター」をチェックするだけで、俯瞰的に企業業績を見ることができるのではないでしょうか。

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