アジア特Q便 鴻海のシャープ買収提案、アップル受注が狙い 技術流出の懸念がネックに (2016/02/24)

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がレポートします。※本記事は2016年2月10日にQUICK端末で配信した記事です。

シャープをめぐる経営再建問題、結論は1か月先送りへ

シャープ(6753)の経営再建にあたって、同社の役員会は台湾の鴻海精密工業(ホンハイ、コード@2317/TW)グループとの提携に傾いているもようだ。鴻海グループに優先交渉権を提供することで、双方の提携が大きく動き出すことになった。
 しかし、技術の外部流出の懸念があることから、日本の官民出資の投資ファンド「産業革新機構(INCJ)」と鴻海グループは交渉を継続することを表明し、 最終決定は1カ月以内に行われるという。急展開を見せる鴻海とシャープのドラマの結末は、さらに1カ月先送りされることになった。

鴻海董(とう)事長はシャープの液晶パネル技術を高く評価

鴻海グループの郭台銘董事長は、シャープの技術を極めて高く評価しており、韓国のサムスンに対抗するための最良のパートナーがシャープだと位置付けている。鴻海グループがシャープの堺ディスプレイプロダクト(SDP)を引継ぎ、資本参加や役員ポストの獲得まで考えているのは、液晶パネルでのシャープの独自技術への興味からだ。
 鴻海グループの戦略に詳しいハイテク産業界の関係者によると、鴻海はシャープに巨額の資金を投入しようとしているもようだ。日本での報道によると、投資額は7000億円にまで追加される見込みだという。これは、米アップル(コード@AAPL/U)からの受注のためだ。
現在、鴻海グループは、アップルからアセンブリからコネクタ、金属筐体(きょうたい)、PCB(プリント基板)、タッチパネルなどのキーパーツまでほとんどの部分を受注している。唯一欠けているのが、低温ポリ・シリコン(LTPS)パネル技術なのである。シャープへの資本参加に成功すれば、鴻海はアップルのキーパーツサプライヤーとして最後に残されていた分野を完成することになる。
 現在、世界のLTPSパネル市場は、シャープ、ジャパンディスプレイ(JDI、6740)、それに韓国のLGディスプレイによって占められている。LTPS市場のうち、50%以上が主にアップル向けに供給されている。
郭董事長はかつて、パネルは戦略物資であり、事業転換を目指す鴻海グループの発展戦略の重要な基礎だ、と語ったことがある。同董事長は、液晶パネル生産の核心技術の大部分をシャープが握っていると強調している。これが、「なぜ鴻海が積極的にシャープの経営への参加を求めているのか?」という疑問を解く最も重要なカギとなっている。

テクノロジーの流出について強い懸念も

鴻海グループとシャープによる2012年の交渉の際、鴻海が670億円を出資してシャープに資本参加し、シャープの株式の約10%を取得するという条件で双方はまとまっていた。しかし、シャープの経営陣は鴻海による資本参加に強い警戒心を持ち続けていた。当時の交渉では、鴻海に対して子会社4社による共同での資本参加方式を求め、1社当たりの持ち株比率を4%以内とすることで、鴻海が単一の最大株主となることを防ごうとした。
 しかし、最近ではシャープ役員会の態度に変化が見られる。シャープの役員会は、鴻海グループとの提携によってより多くの資金が注入され、また部品調達で多大な協力が得られると判断したと考えられる。さらに、郭董事長が自ら日本に赴いてシャープの経営陣と面会し、人員削減を行わないこと、経営に介入しないこと、現在の経営陣体制を維持すること約束したことから、シャープ側の拒絶感を緩和させることができたようだ。
 しかし、鴻海グループとシャープが何度も交渉を繰り返しながらこれまでまとまらなかったことは、日本側がキーテクノロジーの流出に対して非常に神経を尖らせていることを示している。もし、産業革新機構またはジャパンディスプレイが投入資金の金額を引き上げた場合、シャープが最後には外国人を選ばず、事業分割によって今回の経営危機を乗り越える道を選ぶことは間違いないだろう。

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