アジア特Q便 中国経済、市場の信認低下で苦境に 安定への即効薬は存在せず (2016/02/22)

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。※本記事は2016年1月25日にQUICK端末で配信した記事です。

投資家も戦々恐々…”朝令暮改”の中国市場

中国の金融市場が足元で苦境にさらされている。株式相場の大幅な下落が続いているだけでなく、人民元の信用に危険信号がともり、域外への資金流出の状況が深刻だ。こうした状況は外部経済の衰えと関連しているだけでなく、中国が最近相次いで誤った金融政策を打ち出したことで市場の信用が損なわれたことにも関係がある。中国経済は減速し、昨年の経済成長率が25年ぶりに7%を割り込んだ。中国政府は本来であれば景気てこ入れ策を強化すべきだが、人民元が軟調なため実施できる措置が限られている。
 最近打ち出される多くの中国の経済・金融政策は方向性を失っている。昨年7月の人民元建てA株暴落に対処するための「暴力的な相場てこ入れ」では警察まで動員して空売りの動きを取り締まり、世界中の投資家を騒然とさせた。2016年に入り、上海株式市場と深セン株式市場の主要銘柄300銘柄で構成されるCSI300指数(コード@@SHSZ300/SH)の下落幅が7%に達すると市場の取引を終日停止させる「サーキットブレーカー制度」を、導入からわずか数日間で急きょ取り消した。

 こうした朝令暮改の状況は、中国の経済・金融政策に対する投資家の信用を改めて損なった。中国人民銀行(中央銀行)は最近、域外への資金流出加速に対応するため、越境する資金の流動を制限するいくつかの措置を、突如打ち出した。こうした動きは、これまで提唱してきた人民元の域外流動の加速という目標と相反する。中国の経済・金融政策が方向性を失ってしまったのではないかと多くの投資家が懸念しており、今後、市場の信頼を取り戻すまでには一定の時間が必要となるだろう。

再度の大規模景気てこ入れは期待しがたい

中国が発表した昨年の通年の経済成長率は6.9%と、過去25年間で最も遅い成長率だった。このため、投資家たちは中国政府が景気てこ入れ策を打ち出すことを期待している。しかし、景気をてこ入れするには、大金をつぎ込んで景気刺激策を打ち出すか、または大規模な金融緩和策で融資コストを引き下げることになる。
 大量の資金投入によるインフラ投資の促進は2008年の金融危機の際に実施したが、中国政府はいまだに当時4兆元を景気支援に投じたことによる後遺症の対処に取り組んでいる。中国政府は以前、需要の喚起と同時に「供給サイド」への取り組みも行い、在庫を減らして過剰生産能力を抑える必要があると明言した。再び大量の資金をつぎ込めば、生産能力が過剰な製品が大量に製造されて在庫が積み上がるばかりで、在庫と供給の削減を目指す現在の方針と相反する。このため、今回は中国政府が景気てこ入れに再び大量資金を投じるようなことはないだろう。

信用回復が急務

一方、更なる金融緩和策については、元安の現状下では利下げで資金の域外流出が加速され、元の急落を誘発しかねない。元に対する市場の信用が崩壊し、逆に中国経済に重荷となる。人民銀が最近、市場の不安解消の手段として銀行へ充分な資金を提供する方法のみを実施し、融資需要を刺激するための利下げや銀行の預金準備率引き下げを行なえないでいるのはこのためだ。
 現時点で中国本土の金融市場が直面しているのは信用の不足であって、流動性の問題ではない。人民元に対する投資家の信用が失われ、金融市場に重荷となっている。経済を安定させて市場の信用を徐々に回復させる必要があるが、そのための即効性のある妙薬は存在しない。中国政府は大量資金の投入または大規模な金融政策といういずれの措置でも制約を受けており、大規模な相場支援策が実施されることへの投資家の期待は独りよがりの考えにすぎないのだ。

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