QUICK短観 原油安メリット企業は意外に少ない? 金融はマイナス金利の影響直撃(2月調査) (2016/02/19)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(2月1~26日調査分、上場企業418社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス10となり、前月調査から3ポイント悪化しました。これは2013年6月調査(プラス10)以来の低水準です。非製造業DIも6ポイント悪化のプラス30となり、結果、金融を含む全産業DIはプラス21と、前月から5ポイントの悪化となりました。なお、将来の業況を示す「先行き」の業況判断DIは製造業、非製造業ともに悪化。製造業は3カ月先のDIがプラス7となりました。

マイナス金利の影響で金融機関の業況判断が悪化

QUICK短観は、日銀が企業経営者の景況感を把握するために、四半期に1度の割合で発表している「日銀短観」の傾向を把握するのに役立つと共に、比較的、株価との連動性も見られるため、市場関係者にも注目されています。

全産業の業況判断DIをみると、2015年8月調査のプラス35でピークを付け、そこから徐々に下降線をたどり、今回2月調査ではプラス21まで低下しました。景気の現状に対する見通しはじわりと厳しくなっています。

特に注目したいのが、金融機関の業況判断DIが大幅に落ち込んでいる点です。2月調査では前月に比べて17ポイントも悪化し、プラス16まで低下しました。ここまで急落した理由は、1月29日に日銀が発表したマイナス金利政策の導入でしょう。10年国債の利回りまでマイナスになるなか、金融機関にとっては利ザヤの縮小が業績にどう影響するのか懸念されています。株式市場でも、銀行株を中心に大きく売られました。今後の業績に悪影響を及ぼすとの懸念が早くも業況判断DIの悪化で示されたといえます。

3年ぶりに「想定より円高」が「想定より円安」を上回る

生産・営業用設備の現状については、やや過剰感が強まりつつあるようです。過剰、適正、不足の構成比を全製造業ベースでみると、15年12月調査時点で①過剰(9%)、②適正(86%)、③不足(6%)だったのに対して、2月調査では、①過剰(12%)、②適正(80%)、③不足(8%)となりました。今年に入ってからの株安による景気の先行き不透明感が、特に製造業をベースにして過剰感の高まりにつながっていると考えられます。

次に雇用人員の現状についてですが、こちらもやや過剰感が高まりつつあるようです。非製造業も含めた全産業ベースでみると、15年12月調査では、①過剰(5%)、②適正(58%)、③不足(36%)だったのに対して、2月調査では①過剰(7%)、②適正(58%)、③不足(36%)となり、ごくわずかですが過剰との回答が高まりました。非製造業については依然として不足感がある状況ですが、製造業の過剰感が高まっており、全体を通じて雇用人員の過剰感が高まっています。

また、全産業ベースの円相場判断をみると、2月調査で「想定よりも円安」が18%、「想定よりも円高」が25%となり、「想定よりも円安」から「想定よりも円高」を差し引いたDIはマイナス7に低下しました。円相場DIがマイナス(想定より円高とみる企業が多い状況)に転じるのは、実に2012年12月調査以来、3年2カ月ぶりのことです。当時の状況はというと、野田首相(当時)が衆院解散を表明し、アベノミクス相場の起点になったとされる時期とほぼ重なります。ここから円安が進行したわけですが、3年の時を経て円相場に対する見方は転換点を迎えつつあることを示唆する結果となりました。足元では円高・株安に見舞われ日本市場は大荒れの展開となっていますが、まさにアベノミクス相場は正念場を迎えています。

原油安による劇的効果は望み薄?

2016年の金融市場の混乱を招く引き金ともなった原油相場。足元はWTIで1バレル30ドル台まで回復したものの、かつて100ドルを超えていた時期があったことを考えると依然としてその水準は安く、その影響が注目されています。

今回の特別調査では「貴社にとって、昨今の原油安は総合的に見てどのように影響しそうですか」と質問したところ、最も多かった回答は「ややプラスに作用」で43%を占めました。「大きくプラスに作用」(3%)を合計すると「プラスに作用」との回答は46%となり、「やや・大きくマイナスに作用」(14%)を上回りました。一方、「特に影響しない」は39%でした。

原油安は、中東やロシア、その他の産油国にとっては財政面でネガティブ要因になる一方、日本など海外から原油を輸入している国にとっては輸送コスト、機械を動かすのに必要なエネルギーコスト、あるいは原材料コストの低減につながるため、経済的にプラス効果が得られるといわれています。

ただ、「プラスに作用」以外と回答した企業が5割超を占めており、いくら原油価格が過去の高値からみて5分の1程度まで下がっても、「劇的」な経済効果にはつながらないということを示唆しています。「原油安は日本経済にとってプラス」という意見はよく耳にします。しかし、現在はグローバルに展開する企業が増え、産油国や新興国の景気動向が業績に影響を及ぼす比率も相対的に大きくなっているだけに、トータルでみれば劇的な効果は望み薄と受け止められているようです。

女性活躍、企業は「積極的な登用等の取り組み」を推進

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(女性活躍推進法)が昨年、可決成立し、今年4月からは、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定が労働者301人以上の大企業で新たに義務づけられました。

これを受け、「厚生労働省が示す予定の取組分野のうち、貴社が特に重視するのはどれですか」と聞いたところ、「積極的な登用や評価、配置・育成・教育訓練に関する取り組み」が38%で最多となり、次に「積極採用や再雇用・中途採用、継続就業に関する取り組み」が26%で続きました。

安倍政権が打ち出している「1億総活躍社会」の実現に向けて、働き方に関するさまざまな取り組みが行われていきます。女性の社会進出を促進するための環境整備、昇進・昇給の男女差別を無くすための方策、あるいは60歳以降も働ける労働環境整備などが注目されると共に、上記にもある各項目への取り組みも注目されます。積極的な登用や評価によって、働く人のやる気を高めると共に、教育訓練によってボトムを引き上げることなども、これからの日本にとっては重要になると思われます。

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