金融コラム 「アジアで圧倒的ナンバーワン、世界発着の旅行会社を目指す」JTB・高橋広行氏 (2015/12/29)

人口減による消費停滞への打開策として期待されるのがインバウンド(訪日外国人)の増加。インバウンドの拡大で潤う旅行業界最大手・JTBの高橋広行社長に見通しと戦略を聞いた。※本記事は2015年12月10日にQUICK端末で配信した記事です。

地方勤務から社長へ…自治体に根ざした経営戦略に自信

【問】高橋社長は関西ご出身ですね。
【答】入社以来、関西、中国、四国エリアを中心に地方勤務していた社員がJTBの社長になったのは初めてだと思います。今、当社は地域戦略とグローバル戦略の両輪で経営を進めています。そういう意味では、私は地域を経験しているはじめての社長ということになります。社長になったのは、地域を経験していることが大きかったのかもしれません。西日本を中心に営業の現場を経験しているところが歴代の社長と違うところです。

【問】社長にご就任されて1年5カ月が経過しました。手ごたえはいかがでしょう。
【答】地域戦略についてはまさに「我が意を得たり」という思いです。2006年、当社は地域に正対して発展することを志向して地域密着を掲げ分社化を行いました。ここに来て政府は国策として地方創生を打ち出していますが、当社は2006年の分社化以来地域戦略を進めています。例えば、政府の日本版DMO(デスティネーション・マネージメント・オーガナイゼーション。地域の観光マーケティング・マネージメントを担う機関)は、当社が10年前から取り組んでいるDMC(デスティネーション・マネージメント・カンパニー。豊富な地域の知恵、専門性、資源を所有し、イベント、ツアー、地域交流や地域活性化を企画提案する会社)と同じ考え方です。DMC戦略は、地域の埋もれた観光資源を掘り起こし磨き上げて商品化し、それを全国あるいは全世界に流通させて、地域にお客様を呼び込むことで地域を活性化させる、というものです。まさに今、当社が10年前から進めてきた戦略が国の戦略と具体的な形で合致したという思いです。

【問】御社が先手を打って国が後追いをしているようです。
【答】そこまでは言えませんが(笑)。バブル崩壊時に初めて赤字に転落するなど痛手を被った経験から、追い詰められる前に先手を打って改革に取り組んできたことや、マーケットに正対して事業を推進してきたことが、国に先んじて地域事業戦略を展開する結果になっているのだと思います。
当社は地方創生の推進に関与しています。既に多くの自治体からご相談いただき、ふるさと旅行券(商品券)、プレミアム旅行券(商品券)、ふるさと納税などのお手伝いをさせていただいています。2006年に地域分社化して地域密着の営業を展開しているため、地域のことがよくわかります。例えば、ふるさと納税を申し込まれたお客様にふるさと納税のお礼用の地域特産品をアドバイス出来ます。国が政策を打ち出せば「それではこんな感じでやりましょう」と具体策を提案させて頂くことが出来るので、ふるさと納税をはじめ地方創生にかかわる一連のオペレーションを全国の自治体から任されているのだと思います。

旅行業の先行き懸念背景に、交流文化事業へ注力

【問】地域事業戦略を推進する上で2006年の分社化は大きな意味を持っているのですね。
【答】2006年の分社化は当社の歴史始まって以来の大変革だったと思います。地域別と専門領域別の分社化を同時に行いました。地域のお客様と地域を訪れるお客様へのサービスを強化するために、全国1社であった体制を北海道から沖縄まで9地域の分社体制にしました。さらに、お客様のニーズの高度化・多様化に対応するために、ひとつの支店で店頭営業も渉外営業もこなす総合型の営業スタイルから店頭営業と渉外営業を分け、それぞれが専門性を高めていく機能別営業スタイルに変えました。総合型営業の時には店頭と渉外が連携する面もあれば、依存してしまうという面もあったことから、機能別営業スタイルに変えることで主体性を高めるという目的もありました。
分社化に際して、当社がこれから目指す姿、果たすべき社会的役割をとらえ直し、交流文化事業を事業ドメインに据えました。交流文化事業とは、お客様の感動と喜びのために、JTBグループならではの商品・サービス・情報および仕組みを提供し、地球を舞台にあらゆる交流を創造し続けることです。人が動き、人が接して交われば会話が生まれます。会話が生まれると文化が生まれます。その文化を創造して新しい事業を開発しています。

【問】そのためのスローガンが「感動のそばに、いつも」ですね。交流文化事業を事業ドメインに据えた背景をお教え下さい。
【答】ひとつは、事業領域を広げるためです。少子化問題もあって長期的には国内の旅行マーケットがシュリンクしていくのは目に見えています。縮小していく国内マーケット対策として事業領域を広げていく必要性に迫られています。旅行業で培った知見やノウハウがあるので、旅行の周辺部分に事業領域を広げるということです。もうひとつは、事業の質を高めるためです。旅行業は価格競争にいつも晒されています。企画力やオリジナリティーなどを前面に出して次元の違う、質の高い事業を展開すれば、競争が緩和されて経営が安定します。それを交流文化事業の中でやっていこうということです。

【問】会社が大きく舵を切ることに社員に戸惑いはなかったですか。
【答】社員は旅行業をやるために当社に入社しています。それがある日突然、「交流文化事業だ」ということですから、「交流文化とは何ですか」、「旅行会社が旅行ではない事業をどうしてやるのですか」、「そんなことやってビジネスになるのでしょうか」といった声がかなりありました。最初は大変でしたが、2006年の分社化から成功事例が出る度に「これが交流文化事業だ」ということを積み重ねて、現在では社員の理解を得られています。これは本当に大きな意識改革です。一朝一夕に出来ることではありません。交流文化事業の推進にはそれなりの人材を育てないといけません。

【問】交流文化事業に力を入れているのは御社だけですね。
【答】そうですね。交流文化事業を事業ドメインに据えることで、一段と地域活性化、観光立国に寄与出来ると思っています。実際、旅行業とは関係のないような事業、こんなことまでJTBがやっているのですかと言われるような事業をやっています。地方創生、ふるさと商品券、プレミアム商品券などは旅行そのものではないのですが、旅行事業で培ったノウハウや経験をベースに新規事業を展開しています。

地域の恵み発掘、「まちおこし」をより魅力ある観光コンテンツへ

【問】分社化して地域の期待もかなり高まったのではないですか。
【答】これは予想以上で、「分社化してJTBさんは九州に来られたのですね。九州にどれだけお客様を連れてきていただけるのですか」といったお話をよくいただきました。地域のお客様のニーズにお応えするためにどうすればいいのか。当社のパッケージツアーでどうやって地域に呼び込むか。いろいろ模索しながら検討しました。その結果、例えば、ひとつの観光地に東京発、大阪発、仙台発、札幌発、福岡発の複数のパッケージ旅行担当者が個別に見に行って開発・販売するというスタイルをやめて、観光地のエリアの担当者が責任を持ってパッケージツアーを企画・開発して全国に販売するというスタイルに変えました。地域の人たちを巻き込み、当社と地域が一体となってじっくり掘り下げて開発することが出来ますから、これまでなかった面白い商品ができあがります。その成功事例が「地恵のたび」です。「地恵のたび」は、地域活性化をテーマに、知恵と工夫によってまちおこしに取り組む地域の魅力に触れ合う地域交流型旅行商品です。

【問】御社と地域が一体となって行う交流文化事業の推進によって「地恵のたび」が生まれたのですね。地域にどのようにアプローチされるのですか。「地恵のたび」の事例と合わせてお教え下さい。
【答】地域とは違う目線で、「こういう問題を抱えていますが、このように解決してはいかがですか」とソリューション営業を仕掛けます。地域の問題解決をお手伝いする過程で地域の宝を掘り起こし、磨きをかけて商品化していくお手伝いをします。
例えば、長野県の阿智村は、昼神温泉だけに頼らない継続的な地域ブランドの構築が課題でした。2006年に環境省推進の全国星空継続観測において「星が最も輝いて見える場所」第1位を獲得したのですが、阿智村にとっては星がきれいなのが日常です。当社の社員が「この星空は商品になります」と提案したことを契機に星空を観光資源とする気運が高まり、「こういうことが出来ないか」、「もっとストーリーが作れないか」、地域の人と知恵を出し合いながら一生懸命考えました。それで夏場は未稼働のスキー場を活用してはどうかという案が浮上し、「天空の楽園」ナイトツアーを企画しました。ホテルにバスが迎えに来て、ガイドさんがバスの中で星空への思いを盛り上げていく話をします。スキーのリフトであがって降りた所に銀河鉄道999に出てくるようなキャラクターの格好をしたスターコンシュルジュが「ようこそ星空の世界へ」とお迎えし、星空案内で夜の旅を盛り上げます。上に行くと明かりがこうこうとついています。そこに寝転がって夜空を見ます。一斉に照明が消されて星に手が届きそうなくらいの満天の星空が広がります。

【問】暮れなずむ夕日、さんざめく星たち。そこには美しい魅惑の風景が広がっているのですね。忙しい日常を抜け出して心を潤す旅にでかけてみたくなります。
【答】この企画が「地恵のたび」でものすごく売れました。初年度から目標を上回る観光客の誘致に成功し、昼神温泉の宿泊客も増加しました。その結果、パッケージツアーのエースでも取り扱うようになりました。
もうひとつ、大阪府東大阪市は町工場の多い地域で観光地ではなかったのですが、「ものづくり観光」をテーマにストーリー性を持たせて企画したところ大変な人気を博し、今では全国から年間6千人を超える修学旅行生を中心としたお客様が工場見学に訪れています。東大阪の町工場の一番の経営課題は労働力の確保です。学生たちは、社長や職人さんの話を聞き、本物のモノづくりを体験します。現場を見てもらい、関心を持ってもらうことで就職につなげることが期待出来ます。ものづくり・技術大国日本として、ものづくりを体験させることは教育的見地からも良い教材になります。職人にも教える喜びという新たなモチベーションが生まれ活気づきます。自分たちの仕事を見直すきっかけにもなります。人が来ると宿泊や食事などで地域にお金が落ちます。

【問】地域経済や国内旅行市場が元気になります。
【答】日本の人口が減っていく中で、国内旅行を活性化することは当社の大きな命題だと思っています。日本人の国内旅行の年間平均旅行回数は1.4回、宿泊日数は2.4日くらいです。人口減少で国内旅行市場はさらにシュリンクしていくことが予想されます。国内旅行が低迷するのは、魅力ある観光コンテンツが少ないからです。人を呼べる観光資源はたくさんあります。魅力ある観光資源を掘り起こし、旅行回数を増やしていくことが必要です。一度行ったところでも、従来だったらお決まりの観光地を巡るだけだったのが、こういう体験が出来るとか、こういう新しい食事が味わえるとか、地域の観光資源を掘り起こし、それを流通させて地域にお客様を呼び込んでくる。その成果のひとつが「地恵のたび」です。

【問】「地恵のたび」には北海道から沖縄まで86のツアーがありますね。
【答】灯台もと暗しで、地域にいるとその観光価値に気づかないことがたくさんあります。阿智村の人たちも東大阪の人たちも星空や町工場がこれほどの観光資源になるとは思ってもみなかったでしょう。全国には埋もれている観光資源がたくさんあります。地域の課題解決をお手伝いするなかで、地域の埋もれた観光資源を掘り起こし、磨き上げて商品にして、地域にお客様を呼び込む。つまり、地域のお客様を旅行にお連れする「発(はつ)営業」に加えて、お客様を地域に呼び込んでくる「受(うけ)営業」を一緒に行うことで地域を活性化させる。それが当社の役割だと思っています。そうした地域事業戦略を具体的に進める戦略を47都道府県の47とDMC(デスティネーション・マネージメント・カンパニー)の頭文字をとって47DMC戦略と呼んでいます。地域の支店長は、地域のお客様を国内旅行や海外旅行にお連れするだけでなく、地域にお客様を呼び込んでくることが求められます。これからも「地恵のたび」を充実させていきます。

【問】厳しくもやりがいがあるお仕事です。
【答】そういうことをいつも社員に話しています。当社の地域事業戦略は非常にやりがいがある。地域貢献という公益に資することをやろうとしている。なおかつビジネスでやろうとしている。公益と企業益の両立を目指すやりがいのある仕事であると社員に理解させています。

訪日外国人向けの新路線開拓へ

【問】訪日外国人向けの観光コンテンツとして阿智村や東大阪はいかがでしょう。
【答】これからはこのようなところにも関心が持たれると思います。ゴールデンルート一極集中の問題もあります。外国人向けのプログラムも企画中で、国内800店舗、海外500カ所のネットワークを活用して東大阪から世界へと発信する準備を進めています。

【問】「地恵のたび」がゴールデンルート一極集中を緩和し、外国人旅行者を分散するツールになるということですね。
【答】そうです。ゴールデンルート(日本を訪れる外国人旅行者の多くが利用する観光ルート。具体的には、東京から箱根、富士山、名古屋、京都、大阪を回って帰国するルート)に外国人旅行者が集中しています。日本に初めて来た時に一番人気の高い所に行くことは仕方がないことなのですが、時期によってはホテルやバスの手配が出来ないほど混み合っています。従って、限られた観光ルートだけでは収容しきれなくなり、経済効果も頭打ちになります。観光ルートを多様化させて地方に分散させることが必要です。実際、ゴールデンルートや日本の代表的観光地を訪れた外国人旅行者が、次の行き先として地方に足を向けはじめています。この地方への流れを確かなものにするために、地域の魅力を掘り起こして外国人旅行者にご案内します。ゴールデンルート以外の広域観光ルートをどう開発していくかが大きなテーマです。
今、第二のゴールデンルートと言われているのが、名古屋から飛騨高山、北陸を経るドラゴンルート(昇竜道)と言われるルートです。北陸新幹線開業後、国内でも北陸旅行がブームになっています。金沢、富山、能登や、五箇山・白川郷などの世界遺産に外国人旅行者が押し寄せています。

【問】第二のゴールデンルートがドラゴンルートだとすれば、第三のゴールデンルートは北海道・東北方面のルートでしょうか。北海道新幹線の開業が来春2016年3月と間近になりました。
【答】これから大事になってくるテーマが、インバウンド(訪日外国人)市場の盛り上がりをいかに東北に波及させるかです。幸いにして、日本全国に新幹線網が広がっています。東京を起点に2時間30分あれば、関西・北陸、東北もある程度の所までは行けます。東北は観光資源の宝庫です。自然、歴史、文化、食、温泉など、観光に欠かせない要素のすべてを備えた第一線級の観光地です。

【問】奥入瀬渓谷や十和田湖もあります。あの紅葉の美しさを外国人旅行者が見たらびっくりすると思います。
【答】そこに外国人旅行者が行かないわけがない。函館から青森に南下するルートがゴールデンルートに対抗する新たな有力観光周遊ルートになると考えています。
外国人旅行者は、震災で大被害を受けた東北への旅行を遠慮しているところがありますが、東北のお客様は外国人旅行者に来てほしいと思っています。一方、東北の人たちの中にはいまだに苦しんでいる人もいます。2016年、震災から5年の節目として震災を風化させない、東北を忘れない、福島を忘れないという思いを込めて、JTBグループをあげて東北のキャンペーンをやるつもりでいます。東北、福島の人たちと一緒に正しい情報を内外にきちっと発信していきます。北陸新幹線が開業して、首都圏だけでなく東北からも北陸に行きやすくなりました。この冬は北陸の良さというものを首都圏エリアから東北エリアの方々に知っていただくいいチャンスです。

【問】2015年1~10月の訪日外国人旅行者数は、前年同期比48.2%増の1631万人超えと通年で過去最高だった14年の1341万人を更新。年間1900万人台に達する見込みです。訪日外国人急増の背景をどうお考えですか。
【答】円安に加えて、ビザの発給要件の緩和が大きかった。それから、免税店が急激に充実しています。これは爆買いを支えるインフラです。今、免税店はすごいです。政府は2020年までに2万店の目標を掲げていますが、既に1万9千店と間違いなく目標を超えます。この流れは地域にも及びます。当社は地域の旅館や商店に「外国人旅行者がどんどん来るようになってからでは遅いので、早く免税制度を申請して受け入れ準備をして下さい」とお願いしています。

グローバル事業枠組み構築でシェア拡大を…各国の習慣にも配慮

【問】御社の訪日外国人旅行者取り扱いのシェアはどのくらいですか。
【答】当社のシェアは15%くらいです。この結果には満足していません。というのも、当社は他社が持っていない強みを持っています。発(はつ)地ではグローバルネットワークを持っており、受(うけ)地ではきちっと受け入れるだけの体制を整えています。訪日外国人はどんどん伸びていますが、その内の4人に一人は中国人旅行者です。当社は中国において、中国政府公認の旅行エージェントですが、中国公認の外国の旅行会社は世界でJTB、アメックス、TUIの3社だけで、当社にはそういうアドバンテージがあるのです。そういったことを踏まえ、東京オリンピック・パラリンピックの2020年までに30%を目指します。

【問】2020年東京オリンピック・パラリンピックで日本に関心が向いている時ですから30%は固いのでは。
【答】いえ、高い目標です。現在はJTBグローバルマーケティング&トラベルが、フル稼働で訪日外国人対応をしていて、前年比150%以上というすごい伸びを続けているのですが、それでもシェア30%にはまだまだ届きません。訪日外国人、例えば、中国人旅行者が航空券や日本での宿泊先を確保する場合、中国のエージェントや海外のサイトを利用することが多く、当社をはじめ日本の旅行会社は十分に中国人の需要を取り込みきれていません。中国人は現地の中国系の旅行会社を通じて日本に来て、日本での手配も中国系が行っています。日本の旅行会社のネットワークに取り込めていない中国の人たちがものすごく多いのです。従って、シェア30%は高い目標ですが、実現に向けて強力に推進していきます。

【問】中国の旅行者の中では富裕層がターゲットでしょうか。
【答】そうです。日本でもお金が安ければいいという低価格志向のお客様と、少々お金が高くてもいい旅行がしたいという品質志向のお客様がいます。それは中国も同じです。確かに、中国人旅行者は爆買いに象徴されるように買い物中心です。せっかく日本に来たのに1日中ずっと買物に回って宿泊も食事も簡素な低価格で粗悪なツアーもあります。日本食を食べたかった、旅館に宿泊したかった、温泉に入りたかった、自然・景勝地観光をしたかったといった声が中国人旅行者の間にあります。これから個人ビザ発給要件の緩和で個人ベースの中国のお客様が増えていきます。個人で来られる富裕層をどう取り込むかが中国戦略の最大のテーマです。

【問】訪日外国人の取り扱いを増やすためにはグローバル事業の展開が欠かせません。どう推進していきますか。
【答】今までは、日本のお客様を海外にお連れする、海外のお客様を日本に訪日外国人として呼び込んでくる日本発・日本着という日本中心のビジネスモデルでしたが、当社は日本以外のマーケットで最終的に世界発・世界着というビジネスモデルを作り上げようとしています。世界発・世界着というのは日本を経由しないビジネスモデルです。例えば、アメリカの拠点からアメリカのお客様を中国へ、中国の拠点から中国のお客様をヨーロッパへお連れするというものです。
今、世界500のネットワークを活用して世界発・世界着の旅行を広げて、現地の人たちに日本以外の国へ旅行してもらうサービスの強化をはかっています。そのために現地の有力会社を買収しています。例えば、2014年、スペインのヨーロッパ・モンド・バケーションズの株式を取得しました。スペイン語のスペインツアーの旅行会社です。また、中南米に当社が買収した関連会社があり、中南米発でスペインのヨーロッパ・モンド・バケーションズで受けるのですが、これはほとんど日本人が関与しないビジネスです。M&Aをこれからも必要に応じて進めて行きます。地球を舞台にあらゆる交流を創造し続け、地域戦略とグローバル戦略を加速させ、地域経済と国内旅行市場を活性化させます。そして、アジア市場における圧倒的ナンバーワンポジションを確立させます。

【問】訪日外国人が増える一方で、受け入れ体制の問題が指摘されています。現況をどう見ますか。
【答】ここに来て一気に環境整備が整いつつあります。例えば、外国人旅行者が日本に来て感じる不平・不満のトップがWi-Fi環境です。この環境が整備されていなかったために、街中を離れるとネット接続が出来ない、観光情報を得ることが出来ないといった問題が起こりましたが、今ではほとんど整備されています。多言語表示も進んでいます。空港や駅、主な観光地では、まちの標識などが英語、中国語、韓国語など複数カ国語で表示されています。それから両替問題です。日本の銀行は3時に閉まる、空港に行かないと両替出来なくて不便という問題があります。それを解決する手段として当社独自で両替用ATMを開発して主だったホテルや旅館に設置しました。両替用ATMを置く余裕がない宿泊施設には外貨両替を代行するサービスを始めました。日本の旅館の意識も相当変わってきています。ほとんどの旅館で外国人旅行者に対して「さあ、やるぞ!」という状況になっています。
おもてなしを標榜する国であれば、外国人旅行者が日本に来て困っていることは解決していかないといけません。例えば、ハラル対応です。ビザ発給条件の緩和でインドネシア、マレーシア、シンガポールなどムスリム(イスラム教徒)が多数派を占める東南アジアからの観光客が急増すると予想されます。イスラムの人たちは豚肉を食しません。アルコールもたしなみません。お祈りするスペースが必要です。そうしたことにきちっと対応することがリピーターの増加につながります。日本人が海外で日本語表示を見て「日本人旅行者を大事にしてくれている」と感じるのと同じことです。それがおもてなしの一番の入口です。既に訪日外国人の4割から5割くらいがリピーターです。新規だけでは実現が難しい訪日外国人2千万人、3千万人もリピーターを増やす努力を欠かさなければ実現可能となるでしょう。

(聞き手・QUICK情報・コンテンツ本部 岡村健一)

<高橋広行氏略歴>
1957年徳島県生まれ。79年関西学院大学法学部卒業、日本交通公社(現JTB)入社。2001年JTB西日本エース事業部長、03年高松支店長、05年広島支店長、06年JTB中国四国取締役広島支店長、07年同常務取締役広島支店長、10年JTB取締役旅行事業本部長、12年JTB西日本代表取締役社長、14年6月JTB代表取締役社長。

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