QUICK短観 TPP合意、事業に「良い影響」3割、景況感は3カ月ぶり改善(11月調査) (2015/11/10)

日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(10月23日~11月5日調査分、上場企業422社が回答)では、製造業の業況判断指数(DI)がプラス16となり、前月調査のプラス14に比べて2ポイント改善しました。非製造業も1ポイント改善となり、金融を含む全産業では前月比2ポイント改善のプラス28となりました。


企業景況感、底入れ模索か 先行き判断も改善

企業の景況感は製造業・非製造業ともに3カ月ぶりに改善しました。日経平均株価も8月下旬の世界同時株安以降、約1カ月間の調整を経て戻り歩調を強めているだけに、10月調査分にかけての景況感悪化が一時的なものにとどまるかどうか、今後の動向が注目されます。

業況判断DIの先行きを見ると、全産業ベースはプラス26と前月比2ポイントの改善となっています。過去3カ月の平均をみると、6~8月調査分がプラス33だったのに対し、9~11月調査分はプラス25に低下しています。

その意味ではまだ先行きを慎重に見る必要がありそうですが、10月の米雇用統計が堅調だったことなどから11月に入り円安・ドル高基調が強まっており、今後の製造業の景況感にプラスの影響を与えることが考えられます。非製造業はインバウンド(訪日外国人)消費などの影響で高水準を維持しているだけに、製造業の景況感が回復すれば、先行きを含めて全体の業況判断DIを押し上げる可能性が広がります。その意味では、今後の為替相場の動向には要注目といえるでしょう。

雇用の不足感が一段と強まる

生産・営業用設備の過不足感を全製造業で見ると、過剰から不足を差し引いたDIは11月調査分がマイナス1%となりました。かねてより設備の老朽化が問題視されていましたが、かつては円高の影響で国内の生産拠点を海外に移す動きがあったため、国内で新たな設備投資意欲が盛り上がりにくい環境にありました。ただ、2012年末以降の円安・ドル高により生産拠点を国内に回帰させる動きも出始めており、徐々に国内における設備投資意欲が高まることも期待できそうです。

雇用については、11月調査分の全産業DIがマイナス32%となり、前月からマイナス幅が拡大しました。1月調査分がマイナス21%だったことから考えると、雇用の不足感は一段と強まっていることが分かります。ただ、非正規労働者が4割を占める現状からすると、雇用の不足感の高まりが必ずしも、雇用の安定化や個人消費の大きな盛り上がりにつながらない可能性もあり、状況を慎重に見極める必要もありそうです。

TPP合意、事業運営に「良い影響」が3割強 慎重な見方も

今月のQUICK短観では、以下の2点に関する特別調査を行いました。ひとつは「環太平洋経済連携協定(TPP)発効の影響」について、もうひとつは「職場積立NISA(少額投資非課税制度)」についてです。

10月5日、苦難の末にようやくTPP交渉は大筋合意に至りました。参加国は12カ国で、域内経済規模が世界の国内総生産(GDP)に占める割合は約4割に達します。域内において、関税などの貿易障壁が大幅に引き下げられ、ヒトやモノ、資本、情報が自由に行き来する、巨大な経済圏が出現します。
これに関して、将来においてTPPが発効される場合の貴社の事業運営に与える影響を聞いたところ、「良い影響が出ることが想定される」(6%)、「どちらかと言えば、良い影響が出ることが想定される」(28%)と、「良い影響」との回答が34%に上り、「悪い影響」(8%)との回答を上回りました。企業全体としてはTPP発効により競争力の強化につながるとの期待につながっているようです。

今後、各国において議会承認のプロセスを経て正式に発効されますが、国内手続きが仮に順調に進んだとしても、正式発効は2016年後半とみられています。この間、米国では大統領選挙・連邦議会選挙があり、すでにTPP発効の是非を巡って、米国内では選挙戦の争点になりつつあります。今後も紆余曲折の展開が予想され、特に米国と日本における議会承認の行方が注目されます。実際、アンケート結果では、6割強が「TPP発効が事業運営に良い影響と悪い影響のどちらが出るか判断しづらい」と回答するなど未知数の部分も多いだけに、TPP発効承認に至る国内動向は、まだ予断を許しません。

職場積立NISA導入、「検討していない」が97%占める

次に「職場積立NISA」の導入に関する質問ですが、「特に検討していない」との回答が97%を占めました。

職場積立NISAとは、金融機関が取引先である企業の職場単位でNISA口座の契約をし、給与天引きや口座自動引き落としの形で、NISAの積立投資を行うものです。金融機関側から見れば、個人営業で1件ずつNISA口座を獲得するよりも、営業効率が良くなるという考えが働きます。もっとも、利用者側から見ると、職場積立NISAを利用した場合、個人で別の金融機関にNISA口座を開設するのが困難になり、運用する際の商品選択の自由度が狭められるといったデメリットも意識されます。今後は職場積立NISAの使い勝手向上に向けた金融機関の知恵が試されそうです。

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